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年中行事-1

 「年中行事」とは、毎年決まった順序でくり返される行事を指す。年中行事はどの社会にもあるものだ。人間にとって、季節の変化は、作物を作るために重要なものである。だから、春にその年の作物がよくできるように祈ったり、秋に収穫を感謝するために祈るということは、国や地域に関係なく、世界中どこでも同じようだ。自然の力に左右される人間が、人間を超えるものに対して、決まった時期に祈るようになったのが年中行事の始まりである。

 それでは、日本の年中行事で最も重要なお正月を紹介してみよう。遠く離れたところに住んでいる家族や親類が故郷に集まってお祝いする、日本人にとっての最大の行事である。お正月は、新しい年の神様「お正月様」をお迎えするための行事で、新しい年を幸福な年にするには、きちんとお迎えしなければならないと信じられていた。昔は古いカレンダーを使っていたため、2月頃に祝われていたが、今は新しいカレンダーによって1月1日にお祝いするようにたった。

 お正月の準備は11月に始める。11月の始め頃になると、年賀状用の特別なはがきが売られ、印刷屋の広告[I]が届く。年賀状は、お正月にお世界になった人のところへ伺って新年のごあいさつをするかわりに、葉書を書くようになったのが始まりだ。今は、親しい人、親しかった人や、お世話になった人へ、年に一回きちんとあいさつをするという意味が強い。この習慣は、学校の友達や先生、前の上司、昔の知り合いなど、ふだんあまり連絡をとらなくなってしまった人との関係を保つために、大変役にたっている。年賀状が元日に着くようにするためには、12月20日ごろまでに出さなくてはいけない。そのため、多くの日本人にとって、11月、12月は年賀状の季節でもある。

 年末はお正月の準備で大変で、大掃除をしたり、おせち料理の準備、門松やしめ飾りの準備など、お正月を迎えるためにやることはいくらでもある。(最近はクリスマスも祝うようになったので、年末の忙しさはむかしより大変になった。)きれいな家で新年を迎えられるように、ふだんはあまり掃除を手伝わない男性や子供達も、皆一緒に家中を掃除する。そして女性は縁起の良いものを使っておせち料理を作る。近ごろは売っているのを買う家庭も増えたが、お正月の気分になるには、なくてはならないものである。それから、門松を立て、しめ飾りや鏡もちを飾って、お正月を待つのである。

 12月31日は大みそかという。大みそかには、家族そろってそばを食べる習慣がある。ポピュラーな説明によると、そばは長いので、「そばのように長く生きられますように」という意味があるのだ。そばを食べたら、除夜の鐘をつきにお寺へ行く。仏教によると、人間の悪いことは108あるそうだが、それを消すために鐘を108回つくのである。現代ではテレビも大みそかに大きな役割を演じるようになった。若い世代はレコード大賞[II]を見るし、紅白歌合戦[III]は年越しそばを食べながら家族全員で見るものである。それからテレビで除夜の鐘を聞くというのが最も一般的な大みそかの過ごし方だろう。

 元日の朝、初日の出を見る習慣もある。太陽に向かって「今年も良い年でありますように」と手を合わせて拝むのである。また、神社は初詣での人で大変にぎわう。家では、家族が丁寧なあいさつをきちんとして、新年のお酒[IV]を飲む。食べるものは、おせち料理と並んで、お雑煮がお正月の代表である。おぞうにはおもちをお汁に入れたもので、地域や家庭によって様々な作り方がある。だしを何でとるが、みそを入れるか、中身は何か、おもちを焼くかあるいは煮るかによってバリエーションはうたかである。

 まだ、お正月は子供達にとってはお年玉[V]がもらえる、うれしい行事だ。お年玉は外国人には「子供にしては多い」と思える金額だろう。だから、お年玉で子供に買ってもらえるように、ゲームのソフト等のおもちゃが年末にたくさん発売される。今日では、子供の興味の中心は、テレビゲームである。それに対して、伝統的なお正月の遊び[VI]はあまり人気がない。伝統がなくなってしまうとしたら、非常に残念である。

マイヤーさん:   最近お正月の飾りが売られていますね。ドイツのクリスマスの飾りのようですが、何か意味があるのですか。
森さん:   ああ、しめ飾りですか。しめ飾りは、悪い神様を家に入れないように飾るんですよ。良い神様だけいらっしゃるようにするんです。
マ:   そうなんですか。良い神様だけお呼びするようにするには、しめ飾りがいるんですね。車用のしめ飾りもあるということは、車の神様もおいでなんですか。
森:   おもしろいですね。車の神様もいらっしゃったら楽しいですね。あれは交通事故が起きないようにつけるんですよ。悪い神様は車にもやってくる、ということでしょうね。
マ:   じゃあ、私の自転車にもつけよう。(笑)[VII]
森:   つけるなら、早めにつけたほうがいいですよ。私の両親は縁起が悪いから、お正月ぎりぎりじゃなくて、30日までに飾るように言っていました。
マ:   わかりました。気をつけます。ところで、よく会社やお店の前に立ててある門松は、何のために飾るんですか。
森:   本来はお正月の神様にそこにいてもらうために作ったらしいですね。今では「松は一年中緑だし、竹は生命力が強い植物なので、それを使った門松を立てて、健康で長く生きられるように願う」という解釈に変わったようです。
マ:   じゃあ、昔は普通の家にも飾ったんですね。門松は高そうなのに。
森:   自分で作ったんだと思いますよ。昔の人は今の人よりよく働きましたから。(笑)




I   印刷屋   Da nicht nur Firmen, sondern auch Privatleute nicht selten einige 100 Neujahrskarten abschicken, lässt man sie häufig bei einer professionellen Druckerei vervielfältigen. Es gibt aber auch welche, die ihre Neujahrskarten selbst drucken und diese mit selbst geschnitzten oder gemalten Motiven (meist ein Tiermotiv aus dem asiatischen Tierkreiszeichen) schmücken.
II   レコード大賞   Schallplatten Grand Prix. Zu diesem Anlass werden die in diesem Jahr am meisten verkauften Schlagerplatten und die beliebtesten Newcomer der japanische Schlagerzene ausgezeichnet.
III   紅白歌合戦   Schlagerwettbewerb Rot gegen Weiß. Traditionsreiche Schlagerparade des staatlichen Senders NHK. Hier treten sowohl die alten Hasen der Schlagermusik als auch die Newcomer auf. Diese Sendung wurde auch z.B. in Brasilien, mit großem Anteil an japanstämmigen Menschen, ausgestrahlt. Die Teilnahme an diesen Gesangswettbewerb gilt als die größte Ehre für einen Schlagerstar. Obwohl diese Sendung lange Jahre fast schon ein Synonym für Silvester gleichkam, sank in der letzten Zeit wohl wegen der neuen Privatsender, die zeitgleich Alternativprogramme zeigen, die Einschaltquote.
IV   新年のお酒   Neujahrs-Reiswein. Die Versagen nennt sich „o-toso“ und ist eine Art Kräuterschnaps. Heutzutage Trinkern zu diesem Anlass häufig eine ungewöhnliche Reiswein.
V   お年玉   Neujahrs-Taschengeld. Ursprünglich bedeutete „o-toshidama“ eine Zuteilung von Opfergaben für den Gott an die Familienangehörigen und Bediensteten. Heute bedeutet dieses Wort nur noch Bargeld, dass man Kindern zukommen lässt. Verwandte und Bekannte beschenken Kinder (bis etwa zum Studentenalter) mit Bargeld, dessen Höhe sich an dem Alter des Kindes richtet. Dieses wird in einem bestimmten, dafür vorgesehenen Umschlag eingepackt.
VI   伝統的なお正月の遊び   traditionelle Neujahrsspiele sind z.B.:
はねつき:eine Art Federballspiel
たこあげ:Drachensteigen
こままわし:Kreiselspielen
かるた(百人一首):eine Art Memory Spiel
VII   (笑)   Dieses Zeichen steht in solchen Texten, die eine Konversation wiedergeben und in den ein Gelächter aufkommt.