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日本の宗教

 日本に最初にあった宗教は、神道[I]である。神道は、自然の力を恐れたり、尊敬したりすることからできた宗教だ。近くの山やりっぱな木、大きかったり特別な形だったりする石などが神になった。もちろん、日の神もいる。それから、日本人は歴史的に重要な人も神にしてしまった。それで、日本には800万もの神がいる。

 538年に仏教が中国から渡って来てからは、仏教が盛んになった。しかし、神道も残った。「神道を仏教は全く違う宗教ではない。仏教が神様の形で現れたのが、神道である。」このように、2つの宗教の関係を上手に説明できたためである。日本人はそれからずっとこの両方を信じている。だから、一軒の家の中に、仏だん[II]と神棚[III]の両方が置いてあっても、全くおかしくない。神道や仏教をまじめに信じている人は、朝、神棚にご飯とお水をそなえておく。そして、仏だんには花や季節の果物などをそなえる。

 日本人が本当の意味で宗教的な気持ちになるのは、子供が入学試験を受けるときや、家族が病気になったときである。つまり、神や仏に特別に頼むことがあるときには、日本人は宗教を思いでして、神社やお寺に祈りに行く。「苦しいときの神頼み[IV]」である。

 しかし、普通のとき、たいていの日本人は宗教を意識しない。確かに、お正月には神社やお寺に行って、新しい年の幸せを祈っておく。神社では、運がいいかどうか、おみくじ[V]を引いてみたりする。しかし、これらは、宗教的な意味はほとんどなく、お花見と似た「季節の行事」になってしまっている。まだ、お盆[VI]は仏教の習慣だが、今では「いなかに帰ることができる日」になってしまった。

 まだ、面白いのは、キリスト教の習慣も日本に入っていることである。キリスト教は、ほとんどの日本人には明治時代に渡って来た、全く新しい宗教である[VII]。それでもクリスマスやバレンタインデー[VIII]はもうほとんど日本の行事の一つになってしなっている。もちろん、これらも宗教的な意味は全然ない。クリスマスはケーキを食べて、プレゼントをもらう日だし、バレンタインデーは女性が男性にチョコレートをあげる日である。

 このように、日本では宗教は「苦しいときの神頼み」か、「行事」を意味する。もちろん、日本人の中にも、やはり熱心に仏教や神道やキリスト教を信じている人もいる。しかし、赤んぼうが生まれたときは、神社に天気に大きくなることを祈りに行き、結婚するときは、大勢の人が西洋式に教会で結婚式をし、死んだときにはお寺でお葬式をする。これが典型的な日本人の「宗教」である。

森:   ドイツはキリスト教の国ですよね。マイヤーさんも神様を信じていますか。
マ:   はい。森さんは仏教ですか。
森:   いいえ。私は別に信じている宗教はありません。でも、森家の宗教は仏教です。
マ:   家に宗教がありますか。宗教は個人のものですよね。
森:   確かにそうですが、日本では熱心に宗教を信じている人は多くありません。私も個人的に信じている宗教はありません。しかし、家には決まった宗教があって、その宗教でお葬式をしたり、お墓を建てたりします。それが森家では仏教です。
マ:   なるほど。じゃあ、森さんはお祈りをしませんね。
森:   いいえ、祈ります。旅行でお寺や神社を見に行ったときや、お正月にはお祈りします。
マ:   それはちょっと変じゃありませんか。
森:   ……。確かに変ですねぇ。実は宗教をそれほど深く考えたことがありません。神様や仏様を本当に信じているか信じていないか、自分でも分かりません。念のため祈っています。でも、これが普通ですよ。
マ:   そうですか。でも、今年のお正月に、友達と神社に行ってみましたが、とてもたくさんの人がお祈りしていたので、驚いてしまいました。
森:   ほとんどの人は私と同じですよ。宗教的な意味はあまりないです。クリスマスと同じです。
マ:   日本人の中にも神様や仏様を信じている人はいますか。
森:   はい、もちろんです。まじめに神様や仏様を信じている人もいますよ。たとえば、私のおばは熱心に仏様を信じていて、いつも仏だんに花がそなえてあります。それに、弟はキリスト教に興味があって、よく教会に話を聞きに行っています。


I   神道(しんとう)   Shintoismus
II   (ぶつ)だん   buddhistischer Hausaltar
III   神棚(かみだな)   shintoistischer Hausaltar
IV   (くる)しいときの神頼(かみだの)   „Stoßgebete in Notsituationen aussprechen“
V   おみくじを()   Orakelzettel ziehen
VI   (お)(ぼん)   Bon-Fest (Toten Fest Mitte Juli)
VII   ほとんど…宗教(しゅうきょう)である   Das Christentum wurde im Jahre 1549 durch Portugiesen nach Japan gebracht. Vor allem auf Kyushu gab es daher seit dieser Zeit Christen. Allerdings wurde das Christentum bald durch die damalige Regierung verboten, bis in der Meiji-Zeit die Religionsfreiheit in Japan eingeführt wurde.
VIII   クリスマスやベレンタインデー     Weihnachten und Valentinstag



「日本の宗教」についての質問

  1. 神道にはどんな神がいますか。
  2. 仏教や神道をまじめに信じている人は何をしますか。
  3. 「苦しいときの神頼み」は何ですか。
  4. 「お盆」は何ですか。今はどうですか。
  5. クリスマスやベレンタインデーは日本ではどんな意味がありますか。
  6. たいていの日本人には宗教は何を意味しますか。
  7. 赤んぼうが生まれたとき、結婚するとき、死んだときには、たいていの日本人は何をしますか。
  8. 森さんはどんなときに祈りますか。
  9. マイヤーさんはお正月にどうして驚きましたか。
  10. 森さんのおばさんと弟さんの宗教はどうですか。

「ドイツの宗教」というテーマで作文を書いてください。